2016年01月19日

アートカードで遊ぼう!ワークショップ開催レポート(2015年12月23日実施)

こんにちは、対話型鑑賞ファシリテータ養成講座修了生のおじゃです。昨年の12月23日(火・祝)にRICOH Future Houseでは「クリスマス★フェスタ」という楽しいお祭りが開かれました。一つのフロアでいろんなワークショップが同時に行われる屋台形式。私たちは、親子向けに「アートカードで遊ぼう!」ワークショップを実施しました。45分×3回の開催でたくさんの親子に参加していただきました。


開場と同時に参加者がぞろぞろと入ってきました。みなさん、タイムスケジュール表を手にどのワークショップに参加しようかとワークショップブースをちら見しています。私たちがアートカードをテーブルにひろげて参加者を待っていると、通りかかりの人に「これ、なんですか?きれいですね」とお声掛けいただきました。「幅広い視点で選ばれた芸術作品をカードにしていて、これで神経衰弱ゲームもできるんですよ」と説明すると「えーむずかしそうね」と言いつつも興味深く見てくれて「あとでまた来ますねー」と言ってくださいました。(実際にあとで子どもたちを連れて参加してくれました、ありがとうございました!)



何組かの親子が集まり、さあワークショップスタートです!はじまりは名札づくりから。子どもたちだけでなく親のみなさんにも「今日この場で呼ばれたい名前」を言ってもらい、参加するという気持ちを高めてもらいます。

少し雰囲気が和らいだところで、二種類のゲームをやりました。一つ目は神経衰弱ゲーム。「どうやってやるの?」という空気感に応えるように、ファシリテータが実際に例を交えながら説明します。だんだん要領がつかめてくると、みなさんどんどん前のめりになっていきました。

1年生の男の子が「ないよー」悩んでいると、向かいに座っていた1年生の女の子が「こことここ!」といって教えてくれたり、似たところを決めかねているお母さんをお子さんが助けてくれたりして、一人で考えるのでなくみんなで似たところを探すことができました。

次は二つ目の物語づくりゲームです。次から次へと物語が生まれすぎて「どれを言おうかな」と迷ってしまう子がいたり、あるお母さんは「この絵の印象が強すぎてこれしか出て来なかった」とマルセル・デュシャンの作品を使って斬新なお話を披露してくれて大笑いしたりと、みなさんがリラックスしてゲームに入り込んで楽しんでくれていることが感じられました。ワークショップの前半の時間帯と比べてみると、観察力、発想力が広がっている印象を受けました。

45分があっという間に終わりました。感想をお聞きすると「物語づくりをもっとやりたい」という子、「うちの子にあんな想像力があるなんてびっくり、知らなかった」というお母さん。アートカードを楽しみ、いろんな発見をしてくれたようです。


最後に、今回のイベントのサブテーマが「ラテンクリスマス」だったことにちなみ「ラテンてどんなかんじ?」というコーナーをつくって、ラテンぽいイメージのアートカードを選んでコメントを残してもらうという試みをしました。みなさんが思い思いにいろんなカードを選んでくれて、ラテンのイメージの幅広さに驚きました。

そして、想定外の出来事がおこりました。ある子が絵の中の登場人物に吹き出しを書き、おしゃべりしているようなコメントをしたところ、それを見た他の子どもたちが新たにおしゃべりコメントをしてくれたのです。さらに「ラテンの人たちはおしゃべりなのかもしれないね」という実際の会話につながりました。いろんな形でコミュニケーションが生まれたことが新発見で、とてもうれしい驚きでした。

2015年10月15日

「アートdeトーク×トーク 」〜ほろよい気分で五感の旅に出よう〜 開催レポート 2015.9.15

―大人が絵を見て話す価値って、なんだろう?―

「アートdeトーク×トーク 」〜ほろよい気分で五感の旅に出よう〜 開催レポート 2015.9.15

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こんにちは、対話型鑑賞ファシリテータ養成講座の卒業生のペコです。
先日、RICOHフューチャーハウス(海老名)のオープニングイベントの一環として、大人向けの対話型美術鑑賞会「アートdeトーク×トーク」〜ほろよい気分で五感の旅に出よう〜が開催されました。なんとこのイベント、企画・運営・鑑賞のファシリテートまで、ARDAによる対話型鑑賞ファシリテータ養成講座の受講生たちによって実現されたもの!
普段は小学校や美術館などで子ども向けに開催されることの多い、対話による美術鑑賞会。―大人に向けて、いったいどんな“価値”を提供できるんだろう…?
悩みながらも手探りの中生み出された『大人』に向けた鑑賞会。その当日の様子をお伝えします。


五感に、贅沢なご褒美を
ゆるやかムードで始まった鑑賞会。まずは今日の対話型美術鑑賞を通して達成したいゴールを共有しました。サブタイトル〜五感の旅に出よう〜にもあるように、今日のゴールは「”感覚”をフル活用して、いつもよりよく見て、よく考えて、よく話して、よく聴いて、心地よい疲労感を味わう」こと。普段生活に仕事に忙殺されている私たち大人は、感覚をフル活用して何かを”見る”なんて機会なかなかないですよね。それってある意味、非日常的で贅沢な時間。そんな時間をみんなで楽しみましょうと共有し、会をスタートさせました。


どんなことを言ってもいい!を作り出す場作り
地域創造をテーマに作られたRICOHフューチャーハウス。今回の鑑賞会においても、近隣住民及びワーカー同士の新たな出会い、アートの楽しみ方との新たな出会いの創造をテーマにしました。2つの”出会い”を促進するべく、まずはアイスブレイク。ARDAではお馴染み、アートカード(美術館などが美術作品の写真をカードにしたもののセット)を活用し、

1:今日の気分にマッチする作品を選んで、作品を選んだ理由と併せて行う「自己紹介」

2:隣の人とペアを組んで、お互いのカードの共通点を探して発表&みんなで納得できるかジャッジする「つながり探しゲーム」を行いました。

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各人の作品を選んだ理由や個性溢れるつながりの発見に、一同感心したり笑ったり。場は一気にあたたまり、みんなの距離がぐっと縮まりました。

このアイスブレイクには「よく見る」「作品について言葉にしてみる」「互いの距離を縮める」という狙いがありました。しかしそれよりも、参加者のどんな発言もきちんと受け止めることで生まれた「この場は、どんなことを発言していいんだ!」という共通認識。これがとても重要だったと思います。
アイスブレイクの後は、普段どれだけ見ているようで“見ていないか”を実感してもらうために、ダ・ヴィンチの「モナリザ」やムンクの「叫び」のポーズをとってみる実験。(皆さんは、これらの作品がどんなポーズをとってるか分かりますか?)

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まなざしの共有で、作品に近づく
いよいよ、本題の対話による美術鑑賞の時間!インタラクティブボード(電子白板)に映し出された作品を、皆さん食い入るようにじっくり見ていただきました。
1作品目は、イギリスの画家ジョセフ・ライトの作品。
この絵の中でいったい何が行われているのか…魔術?マジック?…それを取り囲む人々の異なる表情とその心の中…現実にはありえないような不思議な光源の謎…
対話を積み重ねることで、1人では発見できなかった絵の細かな部分や異なる視点を共有しどんどん作品に近づいていきました。
鑑賞後も、作品の前で対話が止まらない参加者のみなさん。(謎がいっぱい!!)

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大人のブレーキをはずしたら、もっと作品に近づけた!

今回の鑑賞会で特徴的なのが、ドリンク(お酒!)と軽食が付いていること。1作品目の鑑賞後みんなでカンパーイ!&いただきます!!これぞ、大人ならではの特典です。参加者同士、ファシリテーターとの距離がいっそう縮まりました。

ほろよい気分で、2作品目に突入!お酒もまわり、更に自由な雰囲気です。

2作品目はダ・ヴィンチの作品。1作品目に対し、登場人物は女性たった独り(と、手に抱かれた1匹の動物)だけ。描かれている要素がぐんと少ないにも関わらず…これぞお酒のチカラ!?参加者同士の間で次々と発言が飛び交い、対話と推理が活発に進んでいきます。(ファシリテータがいらないくらい!)

あたまに何をかぶっているの?…人物の表情は?…何を考えてる?…女性?男性?…実は動物が主役?…実は人物は動物従っている?

次々と視点が変わり、絵の見え方もガラリと変わっていきました。(これぞ対話型鑑賞の醍醐味!)

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大人が絵を見て話すことで得られたもの

最後は、今日の振り返り。面白かった!という声を多数いただいたほか、
●「勉強的な気分ではなく、”純粋”に絵を”見る”ということを楽しんだのは久しぶり!」
●「大人は普段、なかなか思ったことをそのまま発言できる場がない。今日は、自分が感じたことをそのまま、いっぱい話せたことが、すごく楽しかった!」

という、ご意見をいただきました。
当初運営メンバーは、(開催地が研究者が多く勤めているお土地柄)「得られた手掛かりを元に対話を重ね、合理的仮説を導き出す対話型鑑賞の手法は、研究や仕事にも通じる」という発見をお土産にしてもらうと考えていました。
しかしそれ以上に「答えのないことについて自由に語れる場」というものが、いかに大人にとって貴重で重要であるか、わたしたちが教えてもらう結果となりました。(自分らしく心豊かに生きることの意味を考えさせられます!)
大人にとっても大切な場であることが実感できた今回の鑑賞会。よりよいプログラムと場作り、ファシリテートを目指すべく、メンバー一同決意! 
「アートdeトーク×トーク」第2回目を、是非ご期待ください!!!

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