2015年05月23日

「高齢者とアート」に関するセミナーに呼ばれました

報告:@「アーティストとの関わりは私たちに何をもたらすのか」3月15日
   主催:国立新美術館
   A「高齢社会における文化芸術の可能性〜英国から日本視察ツアー」
    Arts for Ageing Society:Japan Study Tour 
   主催:ブリティシュ・カウンシル 4月13日〜4月17日
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今年の2月から4月まで毎月「高齢者とアート」をテーマにした講演依頼があった。「高齢者施設へアートデリバリー」を開始してから、シンポジウムの企画はいつも自作自演、こんなことは初めてだ。高齢化の波が社会全体に急速に押し寄せてきた現実にアート関係者も沈黙してはいられなくなったのだろう。2月のア−トサポートふくおか主催「高齢者とアートのしあわせな出会いを目指して」は前回のブログで報告。その後記録冊子が出版され、熊本現代美術館・学芸員、坂本顕子氏がartscapeに学芸員レポートとして掲載、webをご覧下さい。
アートサポートふくおか http://www.as-fuk.com/koureisya.art.pdf
artscape http://artscape.jp/report/curator/10109251_1634.html

@3月15日「アーティストとの関わりは私たちに何をもたらすのか」“経験する”現場からの検証 会場:国立新美術館
このシンポジウムは、2007年国立新美術館の開館以来アーティストによるワークショップを開催してきたことを基に、美術館の教育普及の在り方や地域コミュニティで行われているワークショップ事例も交え、アートが人にもたらす変化や影響を検証して今後に繋げようと企画された。
 基調講演はニューヨークよりホイットニー美術館のヘザー・マクソン氏が招聘され美術館がどんなポリシーで学校、青少年や家族対象プログラムの提供をしているかを話された。ホイットニー氏の近現代美術コレクションを主とするこの美術館は、当然ながら創設者の考え方が色濃く教育普及にも反映されている。10代の感受性の高い子どもたちに現代美術作家と共同作業をし、アートを批判的に議論して創造的に思考する主体性を身につけることをポリシーに教育普及が展開されている。単なるイベントではなく長期的なプログラムとして学校では学べない、もうひとつの学びの場として美術館の存在がしっかりと地域に根付いている。特に、多民族国家として生きるアメリカの子どもたちへ文化の多様性を学び将来の進路を考える機会ともなっている。そんな子どもたちのなかから、弁護士になった子もいるという。アートで自分を見つめ批評精神を学ぶことが社会へ向けて目を開くことになる美術教育の一例だと思う。
 主催者、国立新美術館・学芸課教育普及室の吉澤菜摘氏は開館以来52回、子どもから大人までを対象にしたア−ティストによるワークショップについて事例をパワーポイントを使って発表された。主として展覧会出品者が自作を見せてからワークショップに入り、参加者は自由に制作する。その過程で自分自身の新たな思考や能力を認め、日常のなかで新しい視点をみつける機会となる。アーティストにとっては表現者と鑑賞者の双方に関わり、言葉で伝える経験となり、自作への意欲が刺激され、アーティストの社会的役割を問い直す。スタッフにとっては新しい視点や哲学に触れることができる。参加者の感情が変化していく様子を見て、アートは生きていくことの延長線上にあると確信できる。課題としては評価、検証が不十分/長期的な取り組みができない/限られた人々、限られた層にしか発信できていない/等が話され「アーティストと関わる教育活動の現場から何ができるのか? 何を発信していけばよいのか?。。。との問題が投げかけられた。
 横浜美術館教育普及の端山聡子氏は、昨年、横浜トリエンナーレで実施した中高生のためのヨコトリ教室プログラムについて発表された。2014年5月から10月まで全13回延べ16日の長期プログラムは、逢坂恵理子館長から国際展の話を聴くことから開始。アーティステック・ディレクター森村泰昌氏と一緒に展示前のからっぽの美術館を見学したり、準備中の館内を歩いたり展示後は作品を案内されるという超特別待遇。その後、参加した中高生は「ヨコトリ号こども探検隊」を編成して8月中旬に小学生へ向けてギャラリーツアーとワークショップを実施する。同年齢でない小学生と一緒に作品を観たり作ったりすることは非日常で新鮮な経験ができたという。皆でまとめた記録「船長の航海日誌」には率直で正直な言葉が手書きで印されていて微笑ましい。この企画は森村氏との会議で「子どもたちにお子さまランチではなくフルコースの体験を!子どもたちだけの世界を!」という発言から始まった。館でも初の取り組みで「学ぶ」から「伝える」、「享受」から「伝達」へ、「消費から「生産」への発見と見守る美術館という経験であった。子どもたちへの種まきがどう開花するか楽しみだ。
 4番目の事例発表「アーティストが高齢者施設へでかける時」と題して、私は2月に行った福岡の時とほぼ同じ内容をDVDを使って話した。福岡では持ち時間は50分で主に福祉関係者対象向けであったが、ここでは25分で美術関係者へ。
 このフォーラムは1部と2部に分けて美術検定ブログに掲載されたので詳細は下記ブログをご覧下さい。
http://bijutsukentei.blog40.fc2.com
http://bijutsukentei.blog40.fc2.com/blog-entry-186.html

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「パネルディスカッション」提供:国立新美術館

 さて、定員200人をオーバーし、大盛況だったこのシンポジウムが残した意義は? 冒頭の主催者からの疑問詞への答えは?
私の率直な感想はヘザー・マクソン氏の話の中に沢山のヒントがあると思った。
日本の美術館は美術館へ足を運ぶファンに留まりがちで、主として入場者数で評価するのが定番となっているようで広がりに欠ける。ホイットニー美術館は社会の中での存在意義が明確にある。美術館を超えて、美術でなくては出来ない人間教育を本気でやっていること、社会的に手が届かない所へ手を差しのべていること、美術で批評精神を養い社会の一員としての生き方を育てる、等、NPO的な活動を美術館が行っている。日本の美術館にはNPOと連携して美術を必要としている人々への企画開発を望みたい。そして、私にとっては高齢者施設でのワークショップは公に開かれていないので、このような機会をいただいたことに深く感謝している。また、事前打ち合わせと見学を兼ねてヘザーさんと企画担当者ご一行で3331ア−ト千代田を訪れて、ARDAスタッフから各活動について説明と意見交換できたことを記しておきたい。

IMG_2141.jpeg ヘザーさんと“ハイ!チーズ!”

A「高齢社会における文化芸術の可能性〜英国から日本視察ツアー」
    Arts for Ageing Society:Japan Study Tour 
主催:ブリティシュ・カウンシル 4月13日〜4月17日

 「高齢化とアート」をテーマに英国から視察団が来るので会って欲しいと、ブリティシュ・カウンシルからお話を聴いのは3月25日。ア−トコミュニティ活動の先駆的な英国からら日本に? 世界でも一番高齢化率の高い日本で芸術面でなにが起こっているのかを見聞したいと? オリンピックを視野に入れての交流を〜という意味が込められていると思うが、短期間で活動関係者との日程調整や対話フォーラなど怒濤の勢いでプランを進行されたブリティシュ・カウンシルの関係者の皆様にお礼を申し上げたい。
  私は4月13日に世田谷文化生活情報センター、キャロット・タワーで発表。他に3人の方が順次それぞれの活動について話した。前日に来日された英国全土から高齢者に関わっている14の文化芸術機関の視察団メンバーの方たちが出席された。
今回も映像を流しながら活動主旨や造形、身体表現、音楽による各アーティストのワークショップでお年寄りの変化、介護者の気付き、アーティスト自身の想い等を伝えた。
  「老いと演劇」OiBOKKeShi オイ・ボッケ・シを主宰されている菅原直樹氏は、介護福祉士で平田オリザの劇団青年座の俳優でもある。老いと演劇をテーマに太古から築きあげられた芸術活動によって「老い」「ボケ」「死」の明るい未来をあぶり出し地域社会の活性化を目指すという。勤務している岡山市の施設では認知症のおばあさんが、いつも、彼のことを時計屋さんと呼ぶので、時計屋さんになって会話をすると、色々な話が出てきて劇になった。お年寄りの存在感は演劇になると思った。市内で実際に認知症の妻と暮らす岡田さんの日常生活を元に「よみちにひはくれない」というタイトルの芝居を、駅前商店街で上演した。20年振りに帰省した人が老人と会うと、自分の妻が徘徊して見つからないと言う。そこで一緒に観客共々ゾロゾロ歩きながら探す。疑似体験となると共に観客は妻を捜す岡田さんの現実と芝居の間を交差しながら観る面白さがあったと言う。老いと演劇のワークショップでは、老いと遊び、ボケと演技をテーマに脈絡の無い言葉やボケを受け入れ、今、この瞬間をここにいる人と楽しむ、ユーモアがある。
 世田谷パブリックウシアターの演劇部・学芸員の恵志美奈子氏は、創造する公共劇場の活動についてレクチャーされた。地域振興をめざす劇場では、コミユニティプログラムとして施設向けと学校対象のプログラムがある。学校へは授業に活用しませんかと発信している。施設へは介助ユニオンへあなたの現場で活用しませんかと問い合わせをして介助者、介護者と対等な関係で一緒にプログラムを考えている。
専門家育成では、演劇を作り発表する。その一例は脳性マヒの人をよんで散歩。共通体験をグループで深め、外部の人へ伝えたいのはなにかを考え脚本を作って劇場で上演。また、介助と介護をテーマに公募して地域より約20人が出演した「ある家族の話」は妹が統合失調症になったことをめぐる家族のことを「地域の物語」として台本を作り、2015年4月1日に上演した。また、6年前より芝居を持って行く@HOME公演を高齢者施設で行っている。年に2回、35分ぐらいの芝居を作って通所施設や特養を訪問。職員さんも芝居に入って頂く。劇場に来られない人へ届けるこの活動は区の補助金で行っている。さすが、世田谷区文化政策の一貫性が年を重ねながら地域に根ざした創造性へと発展していると思った。
 筑波大学・ダイバーシティ推進室の河野禎之氏(臨床心理士)は、平成23年度日本老年精神医学会奨励賞を受賞された若き研究者。認知症の人たちに介入したことの成果について、介入前と後でどのような変化があったか?またはなかったか?を見えるように指標にすることが大切である。今迄は薬によるアプローチが見られたが、本人のQOLへどのくらい変化を与えたかが求められるべきだ。アートは生活の質をあげることに役立つので、その変化を見える化しなくてはならない。測定は困難なので計れるように調べて活用できるものを見つけて作成する。_というようなお話で一部は図表の解説もあった。
 会場からの質疑応答のなかでも活動者と研究者のコラボについて日本の現状を質問され、河野さんは「今日、はじめてアートで活動している人に会いました」。私も「今まで成果をだすことは必要だと痛感していましたが、唾液で使用前、使用後のようなやり方は受け入れられなかった。今日初めてアートで評価できるという方に会えてよかった」と、日本での横のつながりが持てるチャンスとなった。
 「フューチャー・セション:高齢社会における文化芸術の可能性」4月16日/国立新美術館  来日された団体から5分間のスピーチ後に参加者全員、約100名が参加するワークショップが開催された。今日の気づきとして「文化芸術が高齢者社会にできること」を紙に書いて同じ内容の文言でグループを作り、英国からのメンバーが加わって話し合う。そしてグループ代表が壇上に上がって発表。最後には全員が輪になってそのための第一歩となる言葉を英語で発声する。私は「LOVE ART!」と叫んだ。

 この3つのイベントが異なったところからのアプローチだったことで、今迄とは違う感触を得た。高齢者への活動は私個人の発想から無我夢中で突進したところがある。今後はもっと冷静に社会が求めているところを見て、活動すべきだと思った。そして、今までの経験を活かし次世代へ繋げて行くことが私の責任だと感じている。日本での高齢者とアートに関する個々の活動は、それぞれ素晴らしいと思うが点でしかなく面としての繋がりが無い。その点、英国の文化支援は組織的に様々な分野をリンクして基盤ができている。高齢者に関しては上手くいっていない面もあると耳にしたが、既に社会的基盤があるのでサポートの層が厚い。高齢者に対しても選択肢が多いので、自分の好きなことを活かしてQOLを上げられる。
 山のような難題を感じつつ、一歩前進するエネルギーを得ることができた。
 今回の英国視察団は私の報告以外に様々な分野の方々と会談された。その全貌は日英両サイドでまとめの報告書を制作されているので、後日、お知らせしたい。
 
 英国の団体のプロフィールや活動内容をまとめた冊子は、以下にUPされています。
http://www.britishcouncil.jp/sites/britishcouncil.jp/files/aaas_pdfa4.pdf

Play HouseのNicky Taylorさんが日本訪問の報告記事を記載されています。
http://www.ageofcreativity.co.uk/items/961
藤原ゆみこさん掲載BLOG。
posted by ARDA at 19:36 | アートデリバリー(高齢者)

2015年02月25日

高齢者とアートのしあわせな出会いセミナー報告

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 2月11日、福岡市市民福祉プラザで開催された「高齢者とアートのしあわせな出会いセミナー」は満員御礼、参加者たちとのしあわせな出会いで終了しました。
 昨年4月、「アートサポートふくおか」の古賀弥生さんがこの企画を携えてARDAを訪ねてくださった。
 セミナーの主催者、古賀さんは、「学生時代に北欧の高齢者施設を訪問した時、個人の希望でアーティストを招いたり介助者の引率で映画館や劇場、美術館へ行って文化芸術を楽しんでいることに感動した。父親の最期は施設で丁寧いなお世話に恵まれたが何かが欠けていた。文化と福祉が同等の関係で歳をとっても文化芸術に自由に触れることのできる社会にしたいと思う。そんな思いで現在、宗像市の文化事業として高齢者施設でアートワークショップを行っている」とご挨拶。
私は基調講演としてARDA活動「高齢者施設へアートデリバリー」について話し、DVDを上映した。新井英夫さんはアーティストが活動で感じることを語ると同時に、高齢者対象のWSを疑似体験できる解説付きミニワークショップで会場を盛り上げた。また、熊本県立劇場の本田恵介さんは劇場からアウトリーチすることの意義ついて「社会参加の機会を開く社会包摂の基盤作りが劇場の役割として求められている。劇場法もできて25年度より福祉分野へアウトリーチ事業を模索中で高齢者施設へも開始したところです。」と話された。
 質疑応答、パネルディスカッションは私が一番期待していた時間だった。
 このタイトルで来場された方は、どんな思いで参加されたのか?どんな経験をされているのか?なにか今後への糸口でも探れたら〜と。
 活動を開始してから10余年の集大成とし 平成23年ファイザープログラム:心とからだのヘルスケアに関する市民研究支援で一年間かけて、アーティストによるワークショップを詳細に検証して報告書と普及版のDVD付きのハンドブックを出版した。福祉関係者に理解して頂こうとシンポジウムを開催し多くの参加者を得ましたが、その後、期待していた反応は全く無く。。。私は同じことを繰り返したくなかった。古賀さんからのお誘いは突破口になるかもしれないと密かに思っていた。ところが、会場からの声は「東京から大企業を退職して福岡で音楽を出前するNPO法人を立ち上げて、福祉施設を訪ねて営業したが返事は無かった」という中年男性。「始めたばかりだが、助成金がなければ継続は難しい。今後どうしたらよいのか?」「単なるボランティアとしか見られず、介護士さん達は忙しいので参加しない。」等々、どれも私が困っていることと同じだった。
 社会の受け入れ体制が変わらなければ普及は困難、興味をもって協力をしてくださる施設長を探すことしか無いのかもしれない。しかし、本田恵介さんが話されたことは、冒頭の古賀さんの言葉と一致し、インクルーシブ社会への変革を意味すると思う。超高齢社会の現実が意識の変化をもたらしてきたと、改めて感じられたフォーラムでした。<並河 恵美子>

福岡の新聞に掲載されました。クリックで拡大されます。
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posted by ARDA at 18:17 | アートデリバリー(高齢者)

2012年04月06日

東京都人権プラザ【特集展示】介護もアート

桜が今日のあたたかさで一気に開花ですね。
短い時期ですが やはり桜が咲くとうれしくなります。

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CIMG1588.jpg さて
そんな旬の隅田川沿いにある
東京都人権プラザに ARDA『アートで介護』の資料を
展示期間中置かせていただくことになりました。ARDAでもお世話になっている折元立身さん<介護もアート>の隅に。


ちょっと浅草から歩くと距離ありますがいい季節なので
花見で足をのばしていただければ幸いです。

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東京都人権プラザ展示室(企画展 人物で学ぶ人権50人)

特集展示 Vol.2
 <介護もアート>

http://www.tokyo-jinken.or.jp/plaza/tenjishitsu.htm

期間 3/28(水)〜5/30(水)9:00〜17:00
東京都人権プラザ1F展示室(台東区橋場1-1-6) 03-3876-5372
(※最寄りまでは、都バス・台東区循環バスもあります)
<アクセス>
http://www.tokyo-jinken.or.jp/annai/annai.htm

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特集展示企画案 人物で学ぶ人権50人 

(事例 展示期間ごとの入替え)テーマ展開
Vol.1 盲ろう者とコミュケーション
Vol.2 介護をめぐるいくつかの事例
Vol.3 時代を生きる8人の女性
Vol.4 人物で学ぶ人権の歴史

posted by ARDA at 00:48 | アートデリバリー(高齢者)

2012年01月23日

シンポジウムを開催しました。

シンポジウム
「アートで介護 アートがひらくケアの可能性」
を開催しました。


(2012年1月14日(土)13:30〜16:30、 津田ホール会議室)

2011年1月から行ってきた
「高齢者施設へアートデリバリー アートによるケアの可能性に関する調査」が終了し、
その報告も兼ねて、シンポジウムを開催しました。
寒い1月の土曜日の午後にもかかわらず、
約130人もの方の参加があり、会場は熱気に包まれました。

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主催者挨拶 ARDA代表  並河恵美子

第一部 基調講演 
「高齢者にとってアートとは?」というテーマで、
鷲田清一先生(哲学者、大阪大学元総長、アートミーツケア学会会長)にお話しいただきました。

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第2部 映像による紹介 

「高齢者施設でのアートワークショップ」 
2011年4月から9月にかけて、高齢者在宅サービスセンター上井草ふれあいの家で行った
5回のワークショップの記録を上映しました。

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第3部 
パネルディスカッション
「アートがひらくケアの可能性」

第2部で紹介した上井草園での連続ワークショップを踏まえて、
現場からの報告を中心に、アートとケアのかかわりについて議論が展開されました。

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コーディネーター:黒川由紀子
   パネリスト:新井英夫(ダンスアーティスト、体奏家)
         西川 勝(大阪大学コミュニケーション・デザインセンター特任教授)
         藤山邦子(上井草ふれあいの家 元所長)
         並河恵美子(NPO法人 ARDA代表)

<黒川先生のコーディネートで開始>

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<アートとケアはどうつながるか?>
藤山邦子さん(上井草ふれあいの家 元所長)より 
実施後の施設職員の声や変化についてを具体的にお話していただきました。
「いつも難しい方へをお風呂に入れるときに、
新井さんのまねごとして、施設職員からくねくねとからだをほぐしてから 
接してみるというような お互いの気持をほぐすことを思うようになった」は、
アーティストとともにアートデリバリー(アートワクショップ)を
実施しているARDAスタッフも活動を継続していくエネルギーをもらえました。

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また、アーティストの取組むことの意義や
黒川先生のアフリカマサイ族との現地での体験を絡め
人間のもつ本能的なうごきの話など広がってもいきました。

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<黒川先生と新井さんの即興ダンス>
西川先生の臨床現場での経験から感じらる置き去られている問題を
アートなら解いていけるのではないかというご意見もいただきました。
また、『アート』と『芸術』との違いも
なんだかいつももやもやしてしまうことも、ひとつの考えた方として
見いだせた気がしました。

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参加者には、資料として
「高齢者施設 アートデリバリーハンドブック」と
「高齢者施設へアートデリバリー〜アートによるケアの可能性に関する調査報告書」
を提供しました。



いままで10余年にわたり活動してきたことを
多くの方へのご協力のもと
シンポジウムを開催できたことを深く感謝いたします。
今回の企画事業を取組めたことで、多方面からのお意見も伺え
わすかな光の路をひたすら走ってきた中で、見えていなかったことも
少し客観的な立場になって検討できました。

これからにいかにつなげていくかが
当面の大きな課題です。
みなさんにご理解を深めていただき広かっていけばと願っています。

◎会場で配布しました
『高齢者施設 アートデリバリー ハンドブック(DVD付き)』
『高齢者施設へアートデリバリー〜アートによるケアの可能性に関する調査報告書』
有償頒布もしております。ご希望の方はお申込みください。
http://www.arda.jp/postmail/postmail.html

なお
当日の様子がNET TAMに掲載されました。
http://www.nettam.jp/blog/



 



posted by ARDA at 11:41 | アートデリバリー(高齢者)

2011年10月11日

『市民発!介護なんでも文化祭』参加

ARDAも『市民発!介護なんでも文化祭』に参加します。

「市民の手で介護の文化を創ろう!」と介護家族の会や、介護者を支援するNPO法人、
介護・福祉に関わる団体や企業が企画し、
ここで介護に関わる様々な情報の提供や相談ができるだけでなく、
参加した人も交わりながら交流・意見交換が出来る、巨大な井戸端会議場、
まさに介護の文化をつくる場となっています。

是非、立寄ください。


<第7回介護なんでも文化祭の概要>

日時:2011年10月23日(日)10時〜16時    
場所:上智大学四ツ谷キャンパス12号館・体育館1階                                                   

主催:介護なんでも文化祭実行委員会/上智社会福祉専門学校

<文化祭ちらし>はこちらから


会場案内図

セミナー一覧
http://www12.ocn.ne.jp/~arajin/etc/seminar.pdf




■ 12号館 

   5階 介護のはてなミュージアム/「介護者」の広場 

   4階 「わたしたちがちながる地域」の広場

   3階 「ほっとする」広場     

   2階 「セミナー、学び」のフロア

   1階 市民目線の住宅・くらし展示場

 

■ 体育館1階 特別テーマ館「災害と介護」



第7回介護なんでも文化祭/Facebook

第7回介護なんでも文化祭/Twitter
posted by ARDA at 12:55 | アートデリバリー(高齢者)

2011年09月16日

高齢者対象検証ワークショップVol.5

高齢者施設へアートデリバリー」〜アートによるケアの可能性に関する調査
検証ワークショップVol.5
高齢者対象ワークショップ:9月16日(金)13:30〜14:30

「即興で音楽をする」


野村 誠(作曲家/ピアニスト/鍵盤ハーモニカ奏者)

ピアノを中心に楕円形に席を設けた会場に介護士さんがお年寄りを一人ずつお連れする。
参加者、一人ひとりと鍵盤ハーモニカでご挨拶。
初めて見るというその楽器を触って、それぞれの音が流れる。
昭和36年にドイツにある楽器を参考にハーモニカと鍵盤をドッキングさせたという楽器はお年寄りには珍しく受け取られ、当たり前が当たり前でない新鮮な反応と、そこから子どもの時のピアノにまつわる思い出話が聞かれました。

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ひとりづつケ鍵盤ハーモニカでご挨拶

自己紹介で早速、彼らの話を即興で弾き語り、歌う。北国の春のリクエストでは「東北は今大変になっていますね」と唱いながら問いかけると、戦後の配給時代の苦労話が出てくる。
「白樺、青空、北国の春♪ 2時間並んで配給を待ったけれど買えなかったりするんです♪私が小学校のころです♪なにも買えなかったりするけれど、それからズーッと生きて来たのです♪2時間も並んで待ったけど、ガソリンが買えなかったと友人が言っていた♪♪」と一曲、
戦後と現在の東北へとつながり昨日のトークとも重なりました。

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鍵盤ハーモニカ、タンバリン、ピアノで即興演奏

その場の空気とおしゃべりを歌詞にして郷愁を感じる即興演奏のメロディが会場の空気をまったりさせ、離れ難い気持ちにさせていました。

「おやつもここに運んで」と一緒に食べてバスのお迎えまでお喋りと音楽が流れました。通所の利用者さん同士がこんなに話ができることは無いとのことです。「僕は皆さんのお喋りの伴奏をしました。」言う野村さんでした。

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介護士さんもコミュニケーターも楽しく雰囲気つくり

posted by ARDA at 12:20 | アートデリバリー(高齢者)

2011年09月15日

検証ワークショップ Vol.5

高齢者施設へアートデリバリー」〜アートによるケアの可能性に関する調査
検証ワークショップVol.5 
介護士講座 9月15日(木)17:30〜19:00

「即興で音楽をする」

野村 誠(作曲家/ピアニスト/鍵盤ハーモニカ奏者)

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トークする野村さん


次の日の準備を兼ねた事前ワークショップなのですが、野村さんのアーティスト・トークになりました。
インドネシア、ジョグジャカルタから6ヶ月振りに帰国したばかりの野村さんは時間の流れがゆっくりでストレスがなかったこと、帰国後の日本は以前の日本ではないこと。
リセットして、「今、やっていることが何に繋がるのだろうか?」を確認しなくてはと思っていること。
インドネシアはまだ多くの伝統芸能が残って学校の教科書を見てビックリ。小学校から中学2年生までは自国の美術・工芸・音楽を教え、中学3年でアジア、高校でやっと西洋が出てくる。日本文化の継承について考えさせられたこと、等を話しました。
そして、最後の15分で明日のことを打ち合わせ
「その場にいる人との対話や交流をしながら音楽をしていく。
唱ってもよいし、リズムをとっても良いし、耳を傾けても良い。
最初に自分は何者かを演奏と歌で刺激しましょう!」

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posted by ARDA at 12:13 | アートデリバリー(高齢者)

2011年08月25日

高齢者対象検証ワークショップVol.4

高齢者施設へアートデリバリー」〜アートによるケアの可能性に関する調査
検証ワークショップVol.4 
高齢者対象ワークショップ:8月13日(土)13:30~14:30

「からだであそぶ」

岩下 徹さん(舞踊家)

非言語的交流で対人関係の回復と展開をテーマに、今回は13人中女性は3人、その他は男性
の参加。普段、言葉を発しない男性の固いこころをダンスでほぐしてコミュニケーション。
初めの緊張感は徐々にほぐれ、固かった表情に変化が見られた。岩下さんの精神的な深さと
真摯に向き合う姿勢が、参加者の心を動かして、最後には拍手喝采「バンサイ!」が飛び出した。

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初めのご挨拶はいきなり岩下さんのダンスで。

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岩下さんの手の動きに合わせて身体表現する女性。
posted by ARDA at 13:39 | アートデリバリー(高齢者)

検証ワークショップ Vol.4

高齢者施設へアートデリバリー」〜アートによるケアの可能性に関する調査
検証ワークショップVol.4 
介護士講座:8月12日(金)17:30~19:00

「からだであそぶ」

岩下 徹さん(舞踊家)

国際的に活動され、多くの人々を魅了し続けている 岩下徹さんのワークショップです。
交感(コミュニケーション)としての即興ダンスの可能性を追求されている表現を、ワークショップを通し身体について考える機会となりました。

事前のレジュメより その日々の活動への深慮が伝わってきました。
一部 ご紹介します。


何よりも参加者それぞれの身体(存在)への肯定的な気づきを得て頂きたいと思います。
その「自己肯定感」が各々の<生>の充実に繋がると、またその感覚が有るからこそ他者との「対人交流」も生まれてくると思っております。
即興の動きは、特定の型や振付がないのでそれ等を覚える必要がありません。
従って、高齢者にでも未就学児にでも障碍者にでも、誰にでも出来ますが、それ自体が既に「自己表現」となっているため、かえって戸惑いや恥ずかしさを感ずることも有ります。
しかし、即興は私達が日々の営みのなかで行っているものでもあり、<個><個>の自発性を探り当てれば必ず自然に表われてきます。
たとえそれがどんなに小さな動きであっても、或いは全くの静止であっても、その<個>でしかあり得ない独自性が表われているのです。
そのことを出来るだけ見逃さないように致しましょう。


参加された介護士さんたちと
「自分のからだを再確認する」ワークショップを体験いたしました。

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床にゴロゴロ。。自分の呼吸を。。手を床に着けて身体を起こし、また床にゴロリ。
足裏で床をしっかり感じて起立。歩く。ペアを組み身体の一部をくっつけて,合図で
その部位を変える。→アメーバになる。こんな流れで身体感覚の再認識を行う。

終了後は、介護者へ向けてのワークショップについて介護士さんたちからの
意見や提案を伺いました。岩下さんは ことばをひとつひとつ丁寧に選びながら
内容を推考していきました。

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posted by ARDA at 13:35 | アートデリバリー(高齢者)

2011年07月24日

〜アートによるケアの可能性に関する調査〜 <<高齢者対象ワークショップ>>

高齢者施設へアートデリバリー」〜アートによるケアの可能性に関する調査
検証ワークショップVol.3 
高齢者対象ワークショップ:7月14日(木)13:30〜14:30
「わたしの手」
藤原 ゆみこさん(日本画家)

「なんじゅう年も使った大切なご自身の手をモチーフにして絵にしていきます。始めに色画用紙に手を置いて好きな色のパステルでなぞります。紙を回して何回もなぞると線が交差して形ができます。その形を塗っていきます。」
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わたしの手をなぞって線が重ねていきます。

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描き出すと出来ないと言っていたのが嘘のような集中力です。

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フレームに貼って、出来上がり。

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一人ひとりの作品を専門的な視点で講評します。
posted by ARDA at 20:56 | アートデリバリー(高齢者)

2011年07月12日

〜アートによるケアの可能性に関する調査〜<<介護士講座>>

「高齢者施設へアートデリバリー」〜アートによるケアの可能性に関する調査
検証ワークショップVol.3 
介護士講座:7月12日(火)17:30〜19:00
藤原 ゆみこさん(日本画家)

今回はクレパスをつかったワークショップです。介護士さんたちは久しぶりに、グイグイ塗ったり、パステルのふんわりしたタッチで仕上げたりとすっかり夢中になって取り組まれていました。「説明できいたり、作品を見たりしたのと自分で実際にやってみるのとはずいぶん違っていました」とおっしゃっていました。はじめに、藤原さんのスライドレクチャーでの内容は、今後のアクティビティに参考になったと好評でした。
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posted by ARDA at 20:52 | アートデリバリー(高齢者)

2011年06月06日

〜アートによるケアの可能性に関する調査〜 <<高齢者対象ワークショップ>>

高齢者施設へアートデリバリー」〜アートによるケアの可能性に関する調査
検証ワークショップVol.2 
高齢者対象ワークショップ:6月6日(月)13:30 〜 14:30
「ほぐす・つながる・あそぶ」
新井英夫さん(ダンサー、体奏家)

事前に介護士講座を受けられた3人の介護士さんが「高齢者対象ワークショップ」の参加者を12〜3名選んでいただいた方々へ実施いたしました。終了後には、普段では見られなかった参加者の様子や言葉、表情についてワークショップ後にフィードバックしました。

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笛を吹きながらごあいさつ

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介護士さんと新井さんとのダンスに拍手喝采

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薄いポリエチレン・シートを全員で持って動かすと海の波に!

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海底に車椅子で探検
posted by ARDA at 18:34 | アートデリバリー(高齢者)

2011年06月02日

〜アートによるケアの可能性に関する調査〜 <<介護士講座>>

検証ワークショップVol.2
介護士講座:6月2日(木)17:30〜19:00

新井英夫さん(ダンサー、体奏家)ワークショップを介護士さんたちに事前に体験していただきました。
以前 アートデリバリーをこちらの施設にて行った際に参加されダンスにも興味をもっていらっしゃる方もいて、ムードメーカーになられ、楽しんで参加していくださっていたようでした。
検証ワークショップでは受け入れ施設の藤山所長さんの意向で、各ワークショップに合わせて選ばれた3人の介護士さんが事前講座に参加。体験した後、ARDAスッタフと高齢者の対応について話し合いした。

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解放されて身も軽くダンス・ダンス・ダンス!
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2011年05月27日

第1回を終えて

第1回目のワークショップを終えて
スタッフが集まり 2回にわたりミーティングを行いました。
1回目は全体の印象などから、当日のコミュケータとしての
情報交換など
2回目は 撮影したビデオデータを見ながら検証と
次回への留意点などについて話合いをしました。
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2011年05月06日

「マル・サンカク・シカクで描く」

いよいよ上井草園にて検証ワークショップがはじまりました。
講師、みわはるきさんが第1回目となります。
今回 ワークショップに入っていただく介護士さんは
4月28日(木)夕方より事前に体験していただきました。

デイサービスをご利用されている
12名の方にご参加いただきました。

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posted by ARDA at 00:37 | アートデリバリー(高齢者)

2011年05月01日

2011年新規事業・開始

2011年新規事業・開始
「高齢者施設へアートデリバリー」
〜アートによるケアの可能性に関する調査プロジェクト 

助成:株)ファイザー製薬
ファイザープログラム
〜心とからだのヘルスケアに関する市民活動・市民研究支援〜

1999年から実施してきた高齢者施設へのアートデリバリーの結果報告等を整理・分析して
アートによるケアの可能性を検証し、わかりやすく社会にアピール、その一層の普及を
めざします。
5月から、活動発祥の地である杉並区「上井草ふれあいの家」で検証ワークショップを
開始しています。
4人の外部アドバイザーの協力を得て「体験してみないと分らない」高齢者ワークショップの魅力を検証し、言語化します。
そして、
報告書、ハンドブック+DVDの出版、シンポジウムの開催を予定しています。


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アドバイザー

○ 上智大学教授 
   黒川由紀子氏 

○ 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター東京都老人総合研究所研究副部長 
   大渕修一氏

○ 大阪大学コミュニケーションデザインセンター特任教授 
   西川勝氏

○(社福)サンフレンズ 高齢者在宅サービスセンター上井草ふれあいの家所長
   藤山邦子氏


posted by ARDA at 11:12 | アートデリバリー(高齢者)